NPOセクター*時の市場

狛犬

文化遺産を機能化するNPOセクター

特定非営利活動法人 古代邇波の里・文化遺産ネットワーク
赤塚次郎 2015-01-24
(金沢大学人間社会研究域附属 国際文化資源学研究センター 第8回文化資源学セミナー 発表要旨一部改訂)
要旨:「埋蔵文化財情報とは何か」。今日的課題を整理しつつ,硬直化した「まいぶん行政」とその仕組みなどを俯瞰し,その問題解決の糸口を,資料とその背景・ヒトが見える限りなく原点まで立ち戻る事。そこから見えてくる志向性は,考古学というより文化資源・文化遺産学という地平である。同時にその架け橋を,地域社会に貢献すべき明確なミッションをもつNPOセクターとの協働に託したい。
1. 「考古学情報の標準化」と幻想
1)長い歴史をもついわゆる「考古学演習」はまさに多様で,大学・機関・地域により独特の進化を遂げてきた。いってみればそれぞれに「お作法」があり,「習わし」がある。そこに「標準化」を阻む高く・厚い壁が存在した。考古学が総合的「科学」として進化できない根幹が横たわる。そこでまずは「コアデータ・スタンダード」だけを目指した活動を実施したが,その実現化は狭義の内にあり,ことごとく具体化していない。どうしてだろうか・・。
2)今日的な状況は,すでにデジタル化は避けては通れない「道」となった。しかし,やはりそこでも,まだまだ「標準化」へのしたたかな抵抗が現存する。何故か・・。
結論:ここではもう,,すべてあきらめて「幻想であった」としよう・・。

2. 「文化資源・遺産学センター」
1)考古学情報や埋蔵文化財情報は,本来何のためにあるのか・・。そしてその目的は何なのか。それは「地域の歴史を解明する事」ですか?「地域そのものをアーカイブする事」ですか?そうでもあるが,さらに突き詰めて行くと,,,以下の一言に収斂される。それは「街づくり」にある,と考えたい。
2)「お作法」に縛られた現在の考古学業界。この「標準化を拒む壁」を止揚するためには,地域の「街づくり」という土俵に身を委ねること。その事によって,考古資料群たちも地域に受け入れられるモノと化し,活かされると信じたい。
3)(埋蔵)文化財研究は,主に遺跡などの遺物・遺構を中心として「考古学」の枠内で行われてきた。よく関連諸科学との連携を謡うのであるが,それはあくまで考古学的な土俵からの視点や評価のつまみ食いでしかない。社会科学系や自然科学系の学問を交えた新しい総合科学的な視座を目指すも,しかしそれも縦割りの枠組みを打破できず,諸学の寄せ集め的で,専門分化するほどに蛸壺化現象に陥る傾向が強い。
4)では文化資源・遺産学とは何か。新しい学問を目指すというが,まだまだ具体的な行動はあくまで従来の諸学の「井の中」にあるのではないか。そうではなく,隔離された教室からオサラバして、場面から特定のモノだけを取り出し比較研究する事を止め,多様な文化遺産が息づく現実の地域社会そのものへ溶け込む・身を委ねることが不可欠だと思う。文化遺産を文化資源としてどう考えるか,具体的な生活の場において,深く沈殿した歴史レイヤーを静かに見つめながら,その場でしかない,近未来の志向性を多様な手法(学問)と多様な人材・ネットワークを駆使して見つけ出していく事が求められている。

3.  文化遺産を楽しむための「NPOセクター」
1)本来「発掘調査」を担っていたのは第一セクター(国・地方公共団体が経営する組織)ではなかったはずだ。むしろ市民の自主的な活動部隊が主役だった時代がある。民間の私企業(第二セクター)が参入したのは近年であり,主力機関として成長しつつあるようだ。第三セクターとは本来,NPOや市民団体などの非営利団体を指すのであるが,何故か我国では,国・地方公共団体と民間が合同で出資・経営する企業である場合が一般的なように受け止められている。したがって今一度,,第三セクターに遺跡の現場を任し,主導権そのものを取り戻す必要がある。そこに進化した専門性の高いミッションをもつNPOセクターの存在は欠かせない。
2)地域の歴史文化や風土を創造し継承し評価するのが文化資源・遺産学センターであるとすれば,その実践を委ねるのは地域社会へ溶け込む実行部隊であり,そこに活躍する組織は,NPOセクターが中核となる。行政・学センター・セクターというこの協働が新しい風景を造る事を夢見たい。

めざすは・・・時空間を往き交い多様な実生活の歴史を受け止め楽しむ。場面としての「時の市場」の創設。