倭鏡を奉る

東之宮古墳鏡

 

愛知県犬山市 国史跡「東之宮古墳」 白山平(はくさんびら)山頂に奉られた王墓

前方後方墳とその竪穴式石槨は「冬至の日の出」の方向に位置し,全ては白山平の時空域とその地形・風景全体を見事に取り込んだ,まさに壮大な古墳造営である。そこに古代人の強い意志が感じ取れる。また部族的風習をうまく取り入れた仕組みが存在し,そして今もこの場面に息づいているという所が素晴らしい。ほぼ完璧に保存され,守られてきた。

さて竪穴式石槨の日の出の方向には一枚の大きな不思議な「立石」がある。こうした類例は存在しない。砂岩製の板石を立て,その上と回りを砂岩製の割石で丁寧に構築されている。そしてこの不思議な立石に鏡面を王に向けて10面の鏡が立てかけられていた。そしてそれは4つのまとまりとして配置されている。そこに隠された何か意味があるように思える。

日の出の方向に向かって,

A群:人物禽獣文鏡C・三角縁唐草文帯二神二獣鏡・斜縁同向式二神二獣鏡・三角縁唐草文帯三神二獣鏡
B群:方格規矩四神倭鏡・三角縁波文帯三神三獣鏡(鏡は布に包まれ,ヒノキ木製の箱に納められていた)
C群:四獣形鏡
D群:人物禽獣文鏡B(破砕鏡)・三角縁波文帯三神三獣鏡・人物禽獣文鏡D

因に,王が眠る木棺内には人物禽獣文鏡A(破砕鏡)が配置されている。

立石への配置は,人物禽獣文鏡にはじまり人物禽獣文鏡で終わる。B群鏡は竪穴式石槨のほぼ主軸線にあり,木製箱に納められていた事を考えると,ある人物からの拝領の鏡群という位置づけも可能である。A群鏡はおそらく東之宮古墳の主が生前に所有し,彼が好んで大切にしていた鏡群と考えたい。ただし最も愛用した鏡は,唯一,木棺内に置かれた「人物禽獣文鏡A」である事は間違いない。

東之宮古墳の鏡配置は「人物禽獣文鏡」という特異な倭鏡にはじまり「人物禽獣文鏡」という不思議な倭鏡で律せられる。そして光輝く場面において,この地の精霊や獣・昆虫,水・河・里が蘇るのだ・・。